各レイヤでの描画
ということで実際に「映画館のホール」という絵を描いてみることにします。
前回説明したようにざっくりとレイヤを分けます。それを
こうして
こうして
こんな感じに塗っていきます。
背景画はまだまだ研究中ですが、今のところ最大の課題は「それがどの場所であるかをわかるようにする」ということですので色塗りの稚拙さなどはこれからうまくなっていくものだと思ってください。
ちなみに参考にしたのはGoogle検索で「映画館 ホール」や「映画館 券売機」などといったワードを使ったときに出てきたものですが、いずれかの構図をそのまま使用したわけではありません。
複数の構図の中から、一枚の絵に収めていくことでそれがどの場所であるかわかるものになるようにオブジェクトを複数入れ込んでいくというのが主な考え方になります。
やってみてわかったのですが、映画館という場所は美術館並に凝った建築造形をしているところが多く、例えば柱の形状一つとっても単純な正方形や円柱形というわけではなく、角度や大きさを複雑にしていたりということが多いのでそのままトレースなどしたらすぐにばれてしまうだろうなと思います。
絵画に自信のある方であればそうした複雑な建築を再現しつつオリジナリティを入れた書き込みができるかもしれませんが、そうでない者である私としては極力書き込みをおさえつつ場所としてのアイデンティティを考えるという方針にしています。
「フリー素材を使えば時短になるのでは?」
そもそも絵がそんなに得意でないならフリー素材をお手軽に使って加工すればもっと時間短縮ができるんじゃない?という疑問をお持ちになった方もいるのではないかと思います。
しかし以前そのつもりでフリー素材を探して背景にしていたのですが、そのせいで途中で行き詰まってしまったという過去があり、今回からは時間がかかっても自分で描くことにしました。
その行き詰まった理由としましては以下のようなものがあります。
- 複数のフリー素材を使った場合、場面転換ごとに雰囲気が大きく変わってしまう
- ちょうどいい写真やイラストがフリー素材である保証がない
- フリー素材を探すのもかなり時間がかかる
- そもそもとしてその「フリー素材」が本当にフリーであるかも怪しい
順番に説明をしていきますと、まず最初の「場面転換ごとに雰囲気が変わる」ということについてはそのままで、あちこちからフリーらしき画像を引っ張ってくると国や写っているアイテムが全く異なる文化のものであることがあり、背景画像としての説得力がなくなってしまうのです。
例え話をすれば、「海岸」の写真が欲しくて探したときにハワイ沖のものがフリー素材だったとして、次に探した「レストラン」の内部がヨーロッパのものだったりするとまるで一瞬で国を移動したかのように思えてしまいます。
もちろんうまく加工をすればある程度は隠せますが、それでも限度というものがありますので都合よくほしい構図やアイテムを含むフリー画像が同じ雰囲気である保証は全くなく、加工に時間がかかりすぎれば何のためにフリー写真を探しているのか意味がわからなくなってきます。
また同じように「商用フリー」とうたっているようなサイトでも、それぞれメールアドレスやログインIDを取得しなくてはならない場合も多く、いちいちあちこちでそれらをしていく手間の煩雑さやセキュリティ面に不安があります。
二番目の「ちょうどいい写真がフリーである保証がない」にもつながりますが、当然ですがよい写真は有料で販売をされているわけでして、フリーで使用できるものというのは品質に限度がある上に他にも大勢の人が同じように使用しているということもあります。
それが有名なゲーム制作者さんや稀に販売されているコンテンツなどで使用されていた場合、そちらのイメージが強くなり「○○で使われていた画像」といったイメージの方が強くなってしまいます。
じゃあケチケチせずに買えよ、と思われるかもしれませんが個人制作では資金が潤沢にあるわけではありませんし、身も蓋もないことを言えば有料だからといってよい写真である保証もないわけです。
実際に使ってみてやっぱりおかしいということもありますし、あちこちで購入をするとやはり場面ごとにイメージが変化しすぎるという問題はそのまま残ります。あと一つ、販売されている背景画や写真では著作者の権利がより強い場合もありそうすると同一性保持義務があるので自由に加工ができなくなるという不自由さも発生してきます。
三番目の「探す時間がかかりすぎる」についても先に説明した「画像加工に時間がかかりすぎる」問題と同様に、時短のためにフリー写真を探しているのにその検索や条件確認、画像加工に時間がかかるのであればそれは本末転倒というわけです。
やってみればわかると思いますが、自分のイメージぴったりの背景画像や写真というのは案外見つけるのが難しいものです。時々企業が個人のブログの写真などを勝手に使用して炎上したりしますが、フリーかどうかの確認というのは非常に面倒であり、イメージどおりの写真を検索する作業というのはそれ自体が手間なので見つけたら適当に使用してみたくなってしまうのです。私はしませんが。
最後の「そもそもフリーかどうかも怪しい」というのが一番の問題です。
私は以前に音楽制作をしてTwitterにアップするためにフリーのアニメーション画像を探して適当に貼り付けてアップしたことがあったのですが、そのアニメーションは実は海外の(日本でも配信サービスなどで見ることが可能な)放映アニメのものであり、全く関係ない個人の人が勝手に「フリー」というタグをつけてポータルサイトに投稿していたものだとわかりました。
教えていただいた方には感謝しかありませんが、私はすべてのアニメや画像が商用されているものかどうかを判断することができませんので、「フリー」というタグは基本的に信用しない方がいいということを学びました。
ただより怖いものはないとはよく言ったもので、自分が知らないうちに犯罪者になっている可能性があるのが個人制作であるため、危ない橋を渡って適当な素材で妥協するよりもきちんと自分なりに考えて作った方がよいという結論になりました。
これからうまくなっていく予定
現状では専門学校生の卒業制作にも及ばないレベルであるとは認識していますが、それもまた個人制作ならではということで今後背景やBGMは極力自作していくことを決めました。
まあ仲間とかいて都合よく私と目指す方向が一致しているならばよいのですが、複数人で作業をするとどうしても実力や作業スピードにばらつきが出たりしてそこもまた余計なストレスのもとになる可能性がありますのでやはり自分でやるのが一番ということになります。
慣れてくればもっと作業スピードがアップしたり技能が上昇したりする予定ですので、現在の品質はご容赦いただきたいところです。